両うどんのヘラブナ釣り

ヘラブナ釣りで人生を楽しんでいる日曜釣り師です

常時50枚の釣果と大助を釣り上げるために

 ヘラブナ釣り 釣竿のモーメント

 私の記憶が正しければ釣竿のモーメントが求められるようになったりは、釣りの中でも比較的長尺の竿を駆使する鮎竿からだったように思います。初期は6.3mや7.2mだった竿がカーボンロッドがオリンピックから発売されるや8.1mが普通になり、実用新案の期間が満了後こぞって各メーカーからカーボンロッドが作られるようになったのですが、当然のように竹竿ではあり得なかった長尺が使われるようになり、一部の愛好家からは10mの鮎竿を使いこなすところまで進みました。当然軽いカーボンロッドだとしても10mもの長尺を片手で振り回すには無理があり、実際操作出来るには単純に竿の重量ではなくて、持ち重りするかしないかがとても重要な要素となりました。
 今では長くても9mに落ち着いています。または操作のしやすい8.1mやそれ以下の短い竿が見直されるようになっています。


 鮎竿とヘラ竿とは大きな違いが1つあります。それは合わせ動作をするかしないかとなります。鮎竿はいってみれば向こう合わせでひたすら引っかかるのを待ち、掛かればその針が外れないように操作をする程度でしょうか。勿論その前にオトリ鮎をポイントにまで遊動する必要があるのですが、極端な方法としては空中輸送してポイントにポチャンと落としてしまう事もあります。鮎竿の操作はこの程度であってヘラ竿のような合わせ動作は存在しません。
 また初めから一定の竿の重量を感じ続ける持ち方をしていますので、釣り人による竿に与えるショックは与えることはありません。


 ヘラ竿の場合は餌の打ち込み以降竿掛けに置いてしまって、握りを持っていたとしても竿の重量を感じる持ち方はしていません。その後当たりを感知手合わせ動作に移るのですが、それはそれは一瞬のショックを竿に与えていますので、水中から穂先を抜くチカラや竿の重量そしてモーメントが一瞬にして竿に対する負担となっています。
 そのショックの大きさから鮎竿で使われているような高弾性のカーボンは使えないのです。


 ただ竿全体に掛かるチカラは鮎竿の方が強くて、同じ30尺(9m)の竿でも軽量のFXでは193gで173,000円ですが、銀影競技スペシャル Rでは195gで390,000円もします。
 この金額差は使用されているカーボンの違いでもあるのですが、如何に高弾性のカーボンが使われているかが解ります。またそれほど高弾性であったとしてもヘラ竿に比べて太く仕上がっているのです。FXでは穂先0.9に対して握り部分では17.7mmですが、鮎竿では穂先1.1に対して握りは23. 6mmもあります。
 この鮎竿をヘラブナ釣りに使うと合わせたとたんバキッと折ってしまうでしょう。反対にヘラ竿で鮎の友釣りをするとコシがなくて釣り上げる事は出来ないと思われます。


 このように竿によって違いがあるのですが、不思議とヘラ竿では持ち重りであるモーメントは話題になりませんでした。実際1日中竿を持ち続ける鮎竿と竿掛けに置いてしまうヘラ釣りとの違いで、持ち重りを余り気にする必要がなかったのかも知れませんが、実際合わせ動作の段階でその持ち重りを感じる事があります。それが腰の強いヘラ竿を使えば使うほど感じるのです。


 では簡単なモーメントの求め方ですが、モーメントというと特別感がありますが実は、モーメントととはチカラであって車でいうところの馬力ではなくトルクのことです。
 昔々天秤の計算を習った事があるはずです。支点・力点・作用点懐かしい響きですね(笑)。
 少しおさらいしましょう。天秤は作用点と支点と力点までの距離で計算します。
 仮に10㎏のオモリを持ち上げる場合、10㎏のオモリが作用点で支点からの距離が1mだとして、力点までの距離が2mだとすると10÷2で5㎏の力で10㎏のオモリを持ち上げることが出来ます。


 竿に置き換えるとどうなるかです。竿の力点と支点は同じ位置にありますから0として、作用点までの距離はほぼ竿の長さそのものだといえますので、仮に30尺9mのFXの竿が193gですから、0.193×9m=1.737㎏で持ち上げることになります。
 実際竿を仕舞っていると軽いはずの竿が、全部繋ぐと一気に重量感が増してしまうのはこんなところにあります。


 この場合の193g重量は実際は竿全体の重量であって穂先にだけ掛かっている重量ではありませんし、重量の大半が竿全体の元竿側にありますので、こんな単純な計算では求める事は出来ませんが、何となくの目安として感じて頂けるのではないかと思います。
 また持ち重り感を軽減するには竿尻にオモリを仕込むだけで軽減出来るのですが、それはこの際横に置いて話を進めることと致しましょう。


 単純保持しているチカラが1.737ですが、竿を上に跳ね上げるチカラと静止しようとする重力そして水面を切り裂く穂先の抵抗を加味した操作力が必要となります。
 静止しようとする竿を上に跳ね上げようとするチカラで動かすわけですが、この計算は慣性の法則で計算することが出来ます。静止しようとするチカラは重量そのものですが、跳ね上げようとする速度が速ければ速いほど倍増していきます。仮に193gの竿を1の速度で持ち上げると1.737㎏で持ち上げることが出来ますが、2倍の速度で跳ね上げる場合は1.737×2=3.474㎏。3倍の速度の場合は1.737×3=5.211㎏と増えていきます。
 こように速度を上げれば上げるほど持ち上げるモーメントは高くなっていくのですが、同時にそれに耐えうる竿が必要になってきます。単に軽量を求めて作られた竿はこのモーメントに耐えられず元竿の部分が折れてしまうのです。
 私自身元竿を折った経験がありますが釣友も折られた方がいますので、軽量竿を使用する場合は注意が必要です。


 30尺なんて超長尺を駆使される方は極端に少ないと思いますので、これが一般的な半分の15尺程度間ので一気に縮めた場合は、ダイワ月光の15尺の場合は95gです。静止モーメントは95×427.5g出しかありませんので随分と軽く感じるはずです。ただこれに慣性の法則を加えると855gや1.2825㎏などと増えていきます。ただ長尺に比べると随分と軽い印象があると思いますが、軽量竿でも15尺以下で元竿を折る事故は少ないと思います。


 深場をチョウチンで釣ってみたいと21尺や24尺を使われた方も多いと思いますが、その重量に驚かれたことと思います。FXの24尺で127gですが127×7.2=914.4gもあります。実際これに慣性の法則と水切り抵抗が加わりますので簡単に2㎏は超えてしまいますし、ヘラブナが針掛かりした場合にそのヘラブナが1㎏の重量があれば、水の抵抗を無視しても一気に倍増します。


 ここで取り上げました計算によって何を言いたいかですが、軽量竿の不安定さと竿の重量の重要性です。13尺以下の短竿に軽量竿は必要ないと思っていますが、15尺を超える辺りから竿の重量は操作性に大きく響いてきます。ヘラブナとのやり取りも楽しめる範囲なのか苦痛に感じるのかです。
 竹竿などはその典型で13尺程度であればその曲がりを楽しみながら、ヘラブナとのゆったりとしたやり取りが楽しめるのですが、15尺を超える辺りからは竿の上げ下げだけでも苦痛になり出します。それこそ16尺を超えると1日振り続けるのは修行の様相に入ってしまいます。
 個人的に竹竿は好きなのですが流石に15尺が限度になってしまいました。カーボンロッドも旧式だと結構持ち重りをすると思います。超軽量を手に入れる必要はないと思いますが、ダイワのF程度が金額的にも良心的で軽量さも保っていて、尚かつ元竿が折れたとの事故も私は聞いていませんので、軽量竿入門には適しているような気がします。


 コロナ騒ぎで釣行回数も極端に減っていると思いますが、いつも仕舞い込んでいる竿を取りだして、終活に向けた準備も必要ではないかとこの頃特に思うのであります。