両うどんのヘラブナ釣り

ヘラブナ釣りで人生を楽しんでいる日曜釣り師です

常時50枚の釣果と大助を釣り上げるために

 ヘラブナ釣り 竹竿から思う今後のヘラブナ釣り界

 先ず初めに竹竿の制作者は職人でしょうかそれとも作家・芸術家でしょうか。一般に職人とは同じ製品を寸分違わずいつまでも作り続けることが出来る人の事だと思っていますが、いつもいつも違うものしか出来ないのであればまだまだ見習いの域を出ていないことになります。


 この見習いとはどういう意味かですが、ある習い事を始める段階でお金を払って教わる場合は、手取り足取り丁寧に教えていただきますので手習いと表現します。反対に月謝を支払うことなく無給または給金を貰って物事を覚えていくのですが、この場合には丁寧に教わることはなく見て覚えるために見習いと表現します。


 素人がお茶やお花を習う場合は手習いですから、月謝を払って師匠から手取り足取り丁寧に教わる事が出来てそれを身につけていくわけですが、職人の世界になると月謝を払うどころか給金を貰って仕事を覚えていくのですから見て師匠の技を盗んで覚えていく以外ありません。


 調理人の場合は特に厳しくて、最初は追い回し(アヒル)といい兄弟子からアレをしろコレをしろと追い回されるのです。野菜の下ごしらえから鍋釜の洗いなどを担当するのですが、包丁研ぎなんかはまだ出来ませんから砥石を平らにする仕事が先にあります。砥石も包丁を研いでいるとどうしても真ん中が凹んできますので包丁が上手く研げなくなります。そこで砥石そのものを平らに削るのですがコレがまた大変です。
 そこから揚げ物・焼き物・焚き物・脇板・板前と腕に合った仕事が出来るようになるのですが、どんなに上手くなった調理師だとしても作家や芸術家とはいわれずに料理人=職人のはずです。


 ただ現代の職人の世界はどうかというと、有名調理師ですら調理師学校を卒業してから料理界に入りますので手習いで覚えて就職してきます。本来であれば初期段階の行程は見習いで覚えていくのですが手習いで覚えているがために、職場に入っても見て覚えるということが出来ずに手取り足取り教えて貰う手習いのような見習いが出てくることになります。
 事実厨房には出しの取り方や調味料の配分まで紙に書いてあるところがあるんですから時代が変わったと思ってしまいます。


 実はこんな話は調理人に限ったこと出来なくて、警察学校や消防学校でも同じように学校ですから見習いではないので手習いになっているのですが、実は警察学校に入った段階で既に警察官なので給料が出ているんです。そういう意味では見習いのはずですが手習いで教わってきましたので少し強く叱られただけで挫折する若者が増えているのです。その為に簡単に叱ることが出来ないといわれていますが、日本の場合はどうしても精神論が幅を効かせていましたので、根性論が出てしまって何時まで経ってもピリピリとした現場の雰囲気となっているようです。
 それが最近の若者は軟弱になったなんて表現をするのですが、日本的見習い方法は時代遅れでしかないはずです。先進国の中で精神論なんて言っている人はほぼいないのではないでしょうか。


 まぁ考え方やものの捉え方ですからそれぞれ違っていても良いのですが、昔はこうだったなんてことは通用しないのですが、それに気がついていない人たちがまだまだ多いのではなかと思ってしまいます。


 おーーっと!!いつものように脱線しすぎてしまいましたが、竿師は職人でしょうかそれとも作家でしょうか。


 竿師との表現は師と付いていますので師匠や先生という意味になりますが、その前に竿とついていますので竿の専門家という意味になります。医師は医の専門家であり教師は教えの専門家ですね。これとおなじようにその道の専門家を表します。


 ついでの話ですがこの師と士の使い分けといいますが意味の違いですが、師は教え導くものですが技術的専門家を指します。士はどちらかというと資格を持った弁護士や保育士のような個人的資格持った方を指します。どこが違うのか・・・良くわかりませんね(笑)。


 竿師の場合は竿作りの専門家の事を表しますが、実際竿師の方々がご自分のことをどのように思われているか解りません。竿師とはここではヘラ竿を特定しますが竹竿は元々ヘラブナを釣るための道具のはずです。


 道具ですからいってみれば釘を打つ金槌やねじを回すドライバーと同じはずですから、ある特定の役割がある道具ということになります。当然ヘラ竿ですからヘラブナを釣るための竿であるはずです。ただヘラ竿の場合はそこに趣味性が加わって行くのですが、他の道具のように例えば金槌に装飾されることはなく、のこぎりの柄に漆の装飾を加えるなんて事もないのです。
 イメージとしては日本刀に近いのかも知れません。日本刀も道具であるはずですが波紋の表現や反りなどあり勿論切れ味も妖艶とか表現されるような名刀もあるのですが、他に鍔(つば)にも色々と凝ったものがあり装飾製の高いものも存在しています。それこそ鍔が1枚100万円なんてものもざらに存在していますからね。


 ところでヘラ竿については道具から徐々に趣味性が加わるのですが、元々竿の強度のために巻かれた段撒きや口割れを防ぐ口巻として絹糸が巻かれ漆が塗られているのですが、そこから徐々に趣味性が加わり特に握りは竿全体の調子とは関係がありませんで、趣味性の高い装飾が施されるようになります。結果として高価な竿となって行きますので庶民には手が出せない道具になってしまい、旦那衆の趣味の竿としての位置づけとなったがために、一般のヘラ釣り師には見向きもされないという困った状態に陥ってしまいました。


 私の子供の頃は竹竿でも普及品が多数かりましたが、それでもただの口巻だけでなく装飾性の高い段撒きなどの竹竿が安価に購入することが出来ました。それをもって池や川にいってはうどんにサナギ粉を付けて釣りを楽しむ事が出来たのです。
 そうそう鯉釣りもイシダイ用の竹竿を使って近くに流れる宇治川に行き、餌はイモを蒸かして角切りにして2本針に刺して釣っていました。そういえば団子での吸い込み釣りはしなかったですね。


 あちこちと脱線を繰り返していますが竿師が職人ではなく作家だとしたらどうでしょう。いわゆる芸術家の域に達しているのですから、その芸術作品を認め愛する人たちに受け入れられたらいいわけです。つまり庶民とはかけ離れた存在となって行きますので、結果として職業として生計を維持することが出来る人は一握りの方となってしまいます。
 これこそ自殺行為ではないかと思うのですが付加価値をつけるための装飾だとすると、あながち間違った選択ではないのだろうと思うのですが、結果として取り組み間違いをしてしまったのではないかと思えてしまいます。
 ただ反対に安価な竹竿が手軽に手に入るとするとカーボン全盛の現代では生き残れていなかったかも知れません。


 先代の孤舟さんはご自分のことを竿師ではなく作家と称していたようで竿師と呼ばれることを嫌っていたと聞きます。それは未来を狭める結果になったのか現代にまで生き残りが出来る道だったのか、もう少し時間が必要かも知りれませんがどの程度の方が竹竿を使いたいと思われているかどうかです。


 釣り味を求めるには竹竿を抜きにしては語れません。是非一度でも良いので竹竿を手に取って1枚のヘラブナを釣り上げてみて下さい。それによってヘラブナ釣りの世界観が変わると思うのですが如何でしょう。


 最後にあくまでも私個人的感想でしかないのですが、ヘラ竿はどこまで行っても道具であるべきだと思っています。餌の振込から合わせて取り込みに至るまでの仕事をどのように処理しているか。釣り上げても全く寄らないような竿ではヘラ竿として失格でしょう。
 よく良い竿は立てているだけでヘラブナは寄ってくるといいます。つまり道具としての優秀さがヘラ竿の命であって、握りの装飾性の良さが評価されるのは違うのではないかと思ったりします。


 実際あまりにも高価なヘラ竿は出番が少なく押入の肥やし状態になっているでしょう。または部屋の片隅に飾られているのかも知れませんが、芸術の域にまで達したヘラ竿の運命は、1枚のヘラブナも釣り上げたことのない竿となっているのかも知れません。最低限私には芸術の域にまで達した高価な竿は全く使えませんので手に入れようとも思いません。


 勿論どんな世界にも趣味人がいらっしゃいますので大いに手に入れられて、出来ればフィールドに釣れ出して道具として使っていただきたいと思いますが、それこそ野池などで鯉に持って行かれると私はその場で茫然自失となってしまいますが、芸術を愛する趣味人なら意に介すことなく新しい竹竿を出して悠然と釣り続けられることでしょう。


 今後竿師の生き残りを考えますとどの道を進むべきか考えてしまいます。実際バブルが弾けて釣り道具にお金を掛ける人は減っていることでしょう。まぁ今でもお金持ちおられますので心配する必要はないのかも知れませんが、釣り場で竹竿を使われる方は随分と減ってしまって殆ど見かけることもなくなっているのが現状です。


 どうすればへラフな釣り界のすそ野が広がり竿師も生活が出来て、次代にも技を残すことが出来るのでしょう。取り敢えず先ずは1本使って見ることですね。そうすると竹竿の良さも理解できると思うのですが、残念ながら私自信も5年ほど前から竹竿を使う回数が一気に減ってしまったのも事実です。
 なんか暗いエピローグになってしまいました。


 この竹竿は竿師の至連さんの作で銘は天空 総高野竹の8.2尺ですがなんと20万円を個売る価格です。それでも尺24,000円ですからそれ程高価ともいえないのです。


 こちらの竿は竿師の影舟さんの作品で銘はぬけ高野竹です。実は中古品ですが9.2尺でなんとなんと44万円ですからなかなかですね。