両うどんのヘラブナ釣り

ヘラブナ釣りで人生を楽しんでいる日曜釣り師です

常時50枚の釣果と大助を釣り上げるために

 ヘラブナ釣り 高弾性カーボンシートから合成竿のお話

 現代の釣り竿はカーボン繊維が主体で作られています。その昔はガラス繊維であったりポリエステルそれにウィスカーやボロンなどの繊維が使われていました。それらからカーボン繊維に移った主な要因は、オリンピック釣具の特許が切れた事は当然なのですが、同じ重量なら何倍もの強度と弾性を誇ったことに他ありません。


 初期は高弾性の繊維はコントロールが出来なかったためか、カーボンに他の樹脂を多く含めたシートが作られていました。結果当然柔らかくて重いロッドに仕上がっていたのです。それでもグラスロッドよりは遙かに良い調子に仕上がっていたのです。
 その後技術革新が進み高弾性でありながらも柔軟度のあるシートが作られるようになり、またロッドの要求される調子によって特性の違うシートを貼ることで、竿のしなり方も理想に近づけるようになっていきました。


 元々のカーボンシートの価格と1本のロッドを仕上げるための手間などによって、そのロッドの価格が決まっていくことになります。今の工業製品としては考えられないほど手作業が加えられているのも、ヘラブナ用の竿の特徴かも知れませんが、それだからこそ綺麗な仕上がりなど芸術的なロッドとなっています。


 このカーボン繊維シートをカーボン・プリプレグシートと呼ばれていますが、カーボンを特殊な樹脂で固めたシートで、鉄の棒に巻き付けてオーブンで焼くことで固定できるのですが、このシートの開発者である東レではトレカ®との商品名になっています。
 このトレカ®には色々な強度のものがあるのですが、その強度は引張強度と引張弾性率で表すことが出来ます。高弾性ではそれぞれが7.0GPaと324GPaになります。


 GPaとはギガパスカスの略でパスカルとは圧力を意味しますが、以前までは気圧に対してミリバールなんて表現をしていたはずで、それが現在はヘクトパスカルと表現されるようになっていますよね。


 元々のミリバールもなんとなくわかった気になっていたのですが、こりれを細かく見ますと1ミリバールは100パスカルで100パスカルは1ヘクトパスカルとなります。
 1バールは1ミリの1,000倍ですが1バールが1気圧となります。1気圧と聞くとなんとなく知っている単位に近づいてきましたね。地上1mの気圧が1気圧となっているのですが正確には 0.987 気圧となります。
 この1気圧が0.1メガパスカルとなります。0.1メガパスカルの10,000倍が1ギガパスカルとなります。つまり1,000気圧が1ギガパスカルです。


 カーボンシートの高弾性さを表す324GPaということは324,000気圧と同じ圧力ということになりますので、理解は出来なくてもとんでもなく高弾性だということはがなんとなくわかってきます。そのために鋼材より遙かに強度がある事になりますので、橋の補強やビルや煙突の補強にも使われるわけです。


 もうすっかり頭の中がこんがらがっていると思いますが、この高弾性のカーボンより30%もアップした繊維が作られています。それがトレカ®MXシリーズとなるのですが、ヘラ竿に適しているかどうかはその使われ方によると思うのです。


 ヘラ竿で一番重い部分は元竿になりますが、その部分を軽く作ってしまうと持ち重りが強くなってしまって、全体として軽い竿にもかかわらずとても持ち重りが強くて使い辛い竿が出来上がってしまいます。では中間に使ったらどうなるかですが高弾性過ぎてピンピンの竿になる可能性があります。勿論その分細く作り上げるなど工夫することでまた違った趣向の竿が出来上がるのでしょう。


 現代は色々な特性のある竿が出回っています。素材的な意味で高価な竿がそのまま釣りやすくて良い竿とはいいがたく、単純に釣りやすいだけであれば釣り味を無視して軽量に特化した竿で良いのですが、釣り味を追求すると軽量でありながらしなやかさも求めてるようになります。いわゆるハイクラスのヘラ竿は釣り味を重視した竿となっているのですが、その為に各メーカーのフラッグシップの竿は釣り味重視となっているはずです。


 そうなるとやはり競技用とは別格のものにならざる得ないと思うのですが、日曜釣り師としては競技的にポンポンと如何に的確な餌打ち出来ることや、いち早く取り込みが出来るような1投の時間短縮を求めるのではなくて、1枚を釣り上げるその引き味を楽しめる竿こそ優秀な竿だということになるのではないかと思います。その最たるものが竹竿でしょう。


 これからますます技術革新は進んでいくと思いますが、使っている人間側の趣向にどれだけ合わせられるかが、ヘラ竿としての到達点であると思うのですが如何でしょう。
 出来れば釣り味が良いことと同時に腕や肘に負担を掛けないような、そんな竿作りを求めたい気がするのです。
 その一つの答えがシマノの天舞でしょうか。これはいわゆる合成竿ですから今までにも竹竿師の手によって作られていました。どの竿師が作ったかを別にすると最近は比較的手に入れやすい価格で販売されていますので、シマノの天舞は高価な部類に入るのかも知れません。


 竿春から合成竿が発売されたのは昭和60年のことです。そのころはハイブリット竿と呼ばれていました。ヘラ竿がカーボン全盛へと向かう時期でもあったのですが、竹竿の衰退を憂いで考え出されたものです。シマノが天舞を発売したのが平成21年ですから2009年のことですが、竹春が響を世に送り出したのは1985年ですからまだシマノが朱紋峰ぬけさくを発売した年です。
 それを思いますとカーボンが進化を続けてた結果先祖返りのように本調子を見直す時代になったともいえそうです。それは鉄をも凌ぐ強度のあるカーボンが作られたとしても、ヘラ竿に至っては結局竹竿が良かったとの懐古趣味的感想になってしまうのかも知れませんね。