両うどんのヘラブナ釣り

ヘラブナ釣りで人生を楽しんでいる日曜釣り師です

常時50枚の釣果と大助を釣り上げるために

 ヘラブナ釣り 浮きの科学

 ヘラブナ釣りに於いて浮きの果たす役割はとても大きいはずです。浮きなくしてヘラブナ釣りは語れないほど重要なアイテムではないでしょうか。まぁまぁその昔は流れのあるところでは穂先で当たりを取った時期もあったようですが、今ではドボン釣りが確立されているので穂先での当たりを採ることは無くなりました。それはドボン用の浮きが開発されたためでしょう。


 釣りで必要な道具としては竿>道糸>ハリス>針>浮き>オモリ>餌の順でしょうか。道具なくして釣りは成立しませんが、ヘラブナ釣りに限定すると浮きはとても重要なアイテムと思います。浮きにはそれこそ色々な種類がありますが、専用の浮きとしてはヘラブナ用が特化していると思うのです。他の浮きは流用できないほどの繊細さを兼ね備えていると思うのですが、なんとなくもイメージで捉えていた浮きですが、科学的側面から見てみると面白いものが見えてきそうな気がしました。


 ヘラ浮きの形状としては足+胴+トップの3パーツで構成されています。足の長さと胴の長さそしてトップの長さの関係は、釣る棚と密接な関係性を持っているように思われます。
 先ずは浅棚用の浮きの形状は足が長く胴が短いタイプでしょうか。これは如何に早く浮きを立たせるかに主眼を置いた形状だという事が見ただけで理解できます。
 深宙用としては浅棚用に比べて胴が長くトップがヘラ浮きのなかで一番長いタイプです。それは餌のなじみに対して長いストロークで対応するように作られていることが見て取れます。
 そして底釣り用は足が短く胴が長くトップも比較的短く作られています。主に底釣りのチッとした小当たりを表現するためのもので、小さな一瞬の当たりを無駄なくトップに表現するために横揺れなど別の動きにエネルギーを取られない形状となっています。


 大きく分けてタイプですがこれに併せて足がカーボン素材と竹素材に分かれます。また胴は葦とクジャクに分かれますが、安価に作るために桐が使われていたり浮力を高めながら壊れにくいポリカーボネートが使われていたりします。そしてトップも素材差があるのですがパイプトップとムクトップがあります。


 足の素材にカーボンが使われている場合は浮力を極力減らす目的があると解釈できます。また胴は手に入りやすい葦が主流となっているのですが、最近ホウキ草の軸を使われるのも増えてきましたが、一様に表皮が硬い素材が使われていて水にも強いといえるのでしょう。
 トップのムク材は浮力を極力持たせたくない繊細な当たりを取りたい場合の素材ですが、パイプトップでは太さがそれこそ多種ありますのでついつい迷ってしまうのですが、視認性だけを取り上げると極力太い方が良い事になります。しかしヘラ浮きは全体として繊細に作られているのですから、その繊細さを失ってまで太いパイプトップを使う必要があるのかないのかです。


 今回はトップの形状による残存浮力について見てみたいと思います。


 浮力とは流体物(水など)の中である物体に重力とは逆の方向に作用する力である。とされています。これはアルキメデスの原理で証明されているのはご存じの通りです。


Fb =pfVg
Fb :浮力(N, kg·m/s²)
ρf :流体の密度(kg/m³)
V :物体の体積(m³)
g :重力加速度(m/s²)


 頭が痛くなりますので端折って先に進みましょう。少し大雑把な計算ですがイメージとして捉えて頂ければと思いますが、厳密にはパイプトップの中の空気の量やパイプ素材の厚みなども計算に入れる必要があるのですが、無い頭で考えても無駄な抵抗ですから無視しておきます。


 さてトップの長さもヘラ浮きの場合は一定ではないので比べるのは難しいですからここでは仮に20㎝とします。そうそう胴の浮力も大いに関係するのですが、胴はオモリによって水中に沈んでいますので無視します。あくまでも水面上に出ている部分にこそ残存浮力があるわけです。(実はそうではないのですが・・・取り敢えず無視しておきます)
 また残存浮力の計算では沈める水の抵抗は無視してしまいますので形状は無視です。一般に考えて胴が張っているほど抵抗が高いのは説明するまでもないので、単純に繊細な当たりが取りたければスリムタイプが適していて、流れなどによって沈没したくなければ胴が張っている必要があります。当然抵抗力が高いので繊細な当たりは出ない浮きとなります。これはドボン用の浮きの形状を見れば一目瞭然ですね。


 またまた横道に逸れてしまいましたが、トップの太さによってどの程度の残存浮力があるかです。アルキメデスの原理で体積×水の密度ですから、浮力は体積に比例することになります。
 トップ全長20㎝で1mmの直径がある場合、残存浮力は2gしかありません
 これが2mmの直径の場合は4gであり3mmになると6gとなります。
 ん?これは大きな差があるのか無いのか微妙ですねぇ。実はここに物体の密度を加味しなくてはなりません。同じサイズでも鉄の塊は沈みますが中が空洞の多い木片の場合は浮くのはそのためです。
 大凡倍になりますので2mmは4g×2=8g。3mmは6g×3=18gと計算できます。但し2mm3mmでもムクの場合は場数を掛ける必要はありません。つまりパイプトップほど浮力が極端に残ることになります。


 ヘラ釣り師では体感的にというか経験的にその残存浮力は理解できているはずで、オモリ調整の段階で何㎜オモリをカットするか、またはどの程度追加してバランスを取るかをしていると思うのですが、その量は髪の毛の太さ程度でバランスを取っているはずです。


 物の重さは体積×比重×で計算できます


 板オモリは鉛ですから比重は11.36です。
 板オモリの厚みはどのくらいだったでしょう、取り敢えず0.5mmってことにし1.5㎝巾の04オモリで長さ2㎝にカットした場合の重量は17g程度になります。そのオモリを1mmカットした場合0.85g軽くなります。


 ここで不思議なことに気がつきます。残存浮力が2gしかないはずのムクトップの浮きで重りのバランスを取っている場合1mmの調整をすると水没するか全て出てしまいます。そんなことは1度としてないのですから、残存浮力とオモリの比重計算はトップだけでは計算しきれないということになります。水中にある足の浮力と胴の浮力をどの程度残しているのかですが、オモリバランスを取った段階で本来は0のはずです。
 実はアルキメデスの原理にはもう一つ加味しなければならないエネルギーがあります。それは加速度です。水を押しのけるエネルギーこそが浮力なのですから、速度が速まれば早いほど抵抗力が増えてしまいますので、結果として残存浮力に加味しなければならなくなります。


 ということで結論は至極簡単でトップはムクトップの極細で胴の形状も細くスリムなタイプが当たりが鮮明に出る浮きとなります。


 ただ反対に人が思っているほどトップの形状による差はなく、ここでは計算上無視した胴の形状こそ当たりに影響を与えているので、形による水圧に掛かる抵抗が大きいのです。
そのために浮きは全て流線型に作られているのですが、それでも胴が張れば張るほど抵抗が増えてしまいます。
 小当たりを取るためには極力スリムなタイプが適していますが、反対に余計なあおりやジャミの当たりを少なくしたければある程度の張りは必要だということです。


 ってことで結論は何のことはない昔からいわれているように、冬期はスリムタイプでムクトップ、ジャミやヘラブナの活性が高い時期には胴が張り気味でパイプトップが良いって事でしょう。
 頭が痛くなるような途中経過でしたが結論はこんなもんです(笑)。


 私は基本底釣りですから次のタイプを使っています。足は竹で短くて胴が長くトップも短いタイプです。嵯峨


 こちらはどちらかというとトップが長いタイプとなりますので深宙の釣り方のタイプでしょう。底釣りではなじみ巾は多くて3メモリ程度ですのでトップが長い必要がないわけです。水影

 こちらのタイプは足が長くなりますので浮きの立ち上がりが早いタイプとなります。どちらかというと浅棚ようでしょうか。水影


 しかしヘラブナ釣りを続けていますと不思議と浮きにも好みが出てしまいます。比較的小当たりを取ってしまう私ですから、こちらに上げたような節が短いタイプを多用しています。勿論それは釣り堀のような比較的波立ちが少ない池で使うからでしょう。野池などでは当たりも大きく波立ちも大きいポイントでは、節間が広いタイプが使われるのではないでしょうか。反対にいうと節間の広いタイプのトップを持つ浮きを、簡易さのうどん釣り専門池で使うと、多くの小当たりを見逃してしまっているように感じます。
 まぁまぁこれも何のことはないただの好みでしかないんですけどね。


#浮きの写真はネットから拝借しました。