両うどんのヘラブナ釣り

ヘラブナ釣りで人生を楽しんでいる日曜釣り師です

常時50枚の釣果と大助を釣り上げるために

 ヘラブナ釣り 雨の日の過ごし方 「拭き漆」

 今回は雨の日用に新しい玉枠を手に入れて網も別に購入して準備です。枠は今回木製で籐を巻いて仕上げてあります。別に雨だからと玉枠や網を用意する必要はないのですが、蒸し暑い日が続くことで簡単にできることがあるんです。それが拭き漆です。
 玉枠程度であれば単純なウレタン塗装では済ませることが出来るのですが、同じならウレタン塗装ではなくて漆を塗って仕上げる方が単なる自己満足ではあるのですが、ヘラブナ釣りとしてはしっくりくるような気がします。実は漆塗りも思ったよりも簡単な作業で、特に梅雨時期は最適なシーズンでもありますので、雨の日の過ごし方としてご紹介をしておきます。
 網の取り付け方法はまたの機会にご紹介しますが、張りのある網を使いたい場合は柿渋を塗って乾かせます。梅雨時期に漆を塗って真夏になって柿渋で仕上げると最高の玉が出来上がります。


 さて一般的に漆はムロが必要で湿度と温度を保ちながら硬化させるのです。漆の場合はウレタン塗装と違って乾燥させるのではありません。実際に漆は乾くのではなくて湿度と交わって硬化していくのです。その為ある一定の湿度と温度が必要になります。
 そういう意味では日本の梅雨はその条件にぴったり当て嵌まります。梅雨時期はムロを必要とせずに高温多湿の条件が整いますのでそのまま放置していても硬化が完了します。但し自然硬化ですので日数的には余裕を見ておく必要があります。気をつけることとしては間違っても触って硬化が終わっているかを確かめないことです。確認方法は後記します。


 今回は刷毛を使った漆塗りの方法ではなくて拭き漆の方法です。色つきの漆ではなく透明な生漆を使います。漆はウレタン塗装と違ってとても伸びが良くて薄く薄く塗り広げる事が出来ます。また薄く塗り広げることが綺麗に仕上げるコツでもあります。


 私は漆を塗るのも拭き上げるのも油の拭き上げシートを利用します。本来は漆専用の紙があるのですが、油用のペーパーウエスかワイピングクロスが簡単に手に入りますし使い勝手は良いです。通常のティッシュペーパーのような紙では紙の繊維が附着してしまって取れなくなりますので決して使わないことです。万一紙の繊維が附着した場合は、硬化してから耐水ペーパーで漆を削り落として再度塗り直しする以外ありません。精密ピンセットで取り除くことも出来るとは思いますが、顔を近づけすぎて顔に漆が着く大変なことになってしまいますので、そんなことが起こらないように注意して塗る以外ありません。
 同じ理屈で硬化途中に埃が付いてしまうとそれも取れなくなってしまいますので、人の出入りをしない部屋で拭き漆の作業をしてそのまま放置することです。


 また湿度が必要ということで硬化を早めるために風呂場に置くか違いますが、この方法も決してしない方が良いです。湿度が高すぎるはあい漆に曇りが入って白く仕上がってしまいます。この場合も一端硬化させてから耐水ペーパーで漆を削り取る必要になりますので、焦らずに自然硬化を待つようにしましょう。


 漆塗りで気をつけることは手袋を忘れないことでしょうか。ラテックスゴム手袋かニトリル製の手袋が適していますが、メーカーに確認しましたが漆に耐えるかどうか検査していないとのことでした。そういう意味でもできれば二重にして破れても漆が肌に触れないようにすることです。万一どこかに漆が附着した場合は植物油で拭き取ります。その後石けんで洗い流すと概ね取る去ることが出来るはずですが、かぶれやすい人は指先に少し着いただけでも全身にアレルギー反応が出てしまいます。私も全身にかぶれが出てしまい病院に通いましたがなかなか直らず、最終的には免疫抑制剤を処方してもらってやっと完治したほどです。


 漆塗りをする対象物には決して油を付けてはいけません。良く竹竿の手入れ用としてオイルが売られていますが、1度塗って竹に浸透してしまうと漆が塗れなくなってしまいますので注意が必要です。胴拭きをし直すことを前提としている場合は決して使ってはいけないものです。竹竿用のオイルを塗って艶が出たとしても一時的なもので、竹竿には決して良いものではないと思っています。


 下準備として先ずは全体に濡れタオルで汚れを拭き取ります。竹竿の場合ですが竹の茶色い色がタオルに移った場合は胴拭きする時期が来ていることを意味します。もし何も色が付かなかった場合はまだ胴拭きする必要はありません。
 今回私は新しい玉枠に拭き漆をしますので簡単に濡らしたワイピングクロスで軽く拭き上げる程度です。


 汚れを拭き取った後は完全に乾かします。乾燥後に漆を塗るのですが先ずは漆を容器に取り出します。本職はガラス板に漆を出して1度練ったりするのですが、家庭用でそこまで気を遣う必要もなく、そうそう本来は漆を紙で漉してから使うのですが、家庭用としてはチューブからそのまま出して使っても良いと思います。ガラス板を用意するまでもなく使わなくなった小皿で代用できます。但し小皿に附着した漆は取れなくなりますので、汚れても良いものを使うようにして下さい。


 1度に出す漆の量は1円玉程度でそれを小皿に取り出します。それをワイピングクロスに少し付けて対象物に塗ります。竹竿の場合は1度で竿1本の半分以上に塗り広げられるはずです。この1本分というのは仮に15尺だとすると15尺全てという意味ではなくて5本次の1本だけの1本という意味です。勿論穂先などで簡単に塗れてしまいます。


 塗るコツとしては決して厚塗りしないようにすることです。思った以上に広範囲まで塗り広げられますので薄く薄く塗り広げます。2回か3回に分けて1本が塗り終わると思いますが、1本塗っても1円玉大の漆は使い終わらない程度にまで薄く塗り広げます。1本塗り終わったらそのまま待たずに新しいワイピングクロスで塗った漆を全て拭き取ります。仮に厚塗りをしたとしてもこの時に全て拭き取ってしまいますので勿体ないだけです。


 完全に拭き取りが終わった段階で次の1本に取りかかります。同じように薄く塗って全ての漆を拭き取る事を繰り返します。その拭き取り作業ですが、これでもか!ってほどに拭き取ります。この時に少しでも多く残っている部分があると、最後の仕上げ段階でまだら模様に仕上がってしまいます。完全に拭き取ったつもりでも間違いなく漆は残っていますので、そのまま立てかけて硬化を待ちます。天候にも寄りますが長くて1週間程度で硬化をすると思います。
 全てのさおに塗り終わってから最初の1本に塗った量が少ないと感じたとしてもその時は二度塗りをしない方が賢明です。ホンの少しの時間経過で粘度が増している場合があります。それを修正しようと上塗りをすると汚く仕上がるだけですから、この後にも何度も塗り重ねますので少々のことはグッと我慢しましょう。


 塗ってから5日から1週間経って硬化が出来たかどうかを攪乱するのですが、間違っても直接触って確認しないようにしましょう。硬化が済んでいるように感じたとしてもまだかぶれ成分が残っている場合がありますので注意が必要です。
 この硬化を確認する間違いのない方法は初めに塗り広げるために使ったワイピングクロスを残しておきます。その紙が硬くなっているかどうかを鉛筆などで突いて確認するのです。少しでも柔らかさが残っているとまだ完全に硬化が済んでいません。触ってカサカサと音がすると思いますがそれこそカリカリに硬化して初めて塗ったものも硬化が完了していることになります。確認が済んだ後でまた最初と同じように漆塗り作業をするわけです。
 1度塗った程度ではまだまだ途中ですし漆の良い色には仕上がっていないはずです。ただ元々漆塗りがされていた竹竿などでは、元の竹竿の状態によっては1度塗りで綺麗に仕上がる場合があります。殆どの場合は1度塗り程度では塗ったかどうかわからない程度の居ろつかつかないはずです。
 このふるしぬりさぎょうを繰り返すことで仕上げていくのですが、勿論この場合も薄く薄く塗っては完全に拭き取り作業をします。早く色つけしたいとして厚塗りすると時間経過と共に黒く仕上がってしまいますので注意が必要です。この作業を4回から5回程度繰り返すととても良い色と艶が出て漆塗りが完了したことがわかります。
 塗っては拭いてを繰り返しますのでこの漆塗りの方法を「抜き漆」といいます。


 竿師に依頼した場合などでは一度竹竿の漆を全てペーパーで落としてから塗り直してくれますので、なかなか高価ですがとても綺麗に仕上がります。自噴でする場合は失敗しても良いような竿から試されるべきでしょうか。
 合成竿の場合は穂先と穂持ちがカーボンですが、竹竿の部分と同時に胴拭き作業をしても特に違和感なく仕上げることが出来ましたので、特に推奨はしませんが余った漆を使い切るために塗ってしまうのも方法でしょう。


 雨の日は特に良い条件で梅雨本番になると余計に楽に仕上がりますので、1年の内で一番漆塗りに適している時期ですから、雨だと嘆かずに雨だから漆を塗ろうと考えましょう。


 注意が必要なのは生漆と釣具店に売っているカシュー塗料とは全く別のものです、カシュー塗料はカシューウレタンですからウレタン塗装と同じです。またウレタン塗装と同じですから拭き取る作業も必要なく反対に拭き取ることは出来ません。
 勿論竹竿に塗るのは厳禁です!
 もし本物のカシュー塗料が手に入った場合は漆よりかぶれが酷く出ますので注意が必要です。
 知り合いの漆問屋の主人も漆は直に触ってもかぶれないけど、カシューは一発でかぶれてしまったと言ってましたので用心しましょう。


 生漆は我が京都には普通に漆メーカーがありますので簡単に手に入るのですが、一般的にはネットでも購入できます。その場合は割高ですが出来るだけ小さいサイズのものを購入するようにして、ある程度は使い切れるようにすると良いと思います。