両うどんのヘラブナ釣り

ヘラブナ釣りで人生を楽しんでいる日曜釣り師です

常時50枚の釣果と大助を釣り上げるために

 ヘラブナ釣り 少し古いシマノの竿インプレッション

 基本的にメーカーお抱えのテスターは当然竿に対するネガティブな意見はありません。しかし本当に聞きたい意見はその竿の欠点というか、こういう場合には適さないとのポジティブな意見が重要だと思うのですが、残念ながらそれを知ることは出来ません。
 現代に発売されているどの竿を使おうともそれ程遜色があるわけではなく、またこの竿を使うと良く釣れるなんて事は絶対になくて、反対にこの竿を使うと釣れないなんてこともないわけです。価格による釣り竿の差とは軽量化が図られるのは間違いないところですが、操作性として的確な餌の打ち込みが出来るかどうかや、釣り上げるときのまさに釣り味の良さとして現れていると感じます。


 私は一時期ですが軽量ロッドに心酔したことがあります。歳と共に筋力の低下がありますので今でも決して否定はしないですし、時として使っている日もあるわけですが、軽量化によって得られた部分と失った部分を天秤に掛けて、どちらを優先するかとの選択をした結果は、軽量化によって失われた部分にこそヘラブナ釣りの優雅さが隠されていると思い、最近は軽量ロッドを使う機会が随分と減ってしまいました。


 軽量ロッドによって得られた部分はなんと言っても竿の操作が軽快に行える事です。中尺以下の竿では竿の重量は殆ど気にする必要はないと思うのですが、15尺を超える尺数からは1尺伸びる毎に明らかに竿の上げ下ろしに苦痛が増します。それがたった10gや20gの軽量化が図られているだけで全く苦にならないのです。少々風の強い日でも的確に打ち込め軽く釣り上げることが出来るのです。
 単純に竿そのものの軽量化と共に竿先の重さを感じない設計をされているだけで、それはそれは見違えるような軽量感を感じるのです。


 失った部分の最大はヘラブナから送られてくる動きです。それがモロに手に伝わってしまって、ガツガツゴンゴンとした衝撃が吸収されずに強いショック伝わってきます。これは高弾性のカーボンシートを使えば使うほど伝わりやすいのです。その為にテニス肘に陥ってしまう事があるのです。これは私だけが経験したことではなくて、周りの釣り人にも何人かこの現象が現れてしまって竿を振るのが辛くなってしまいました。
 私はこのために1年間痛みに耐える必要があったのです。その為には利き腕の反対で合わせて取り込みは利き腕に持ち替える、そんな面倒な釣り方を経験したものです。


 この高弾性の優位性が発揮されるのは間違いなく鮎竿です。囮の動きが手に取るようにわかって、野鮎がそろそろ掛かるなんて情報すら伝えてくれるのです。ところがヘラブナ釣りでは竿に伝わる情報として、そんなに細かい情報を必要としないはずです。ヘラブナが逃げようとすると竿をためてこちらに顔を向くと引き寄せる。その程度の情報だとするならば竹竿でも十分伝わるわけですから、高弾性の有意差は単に軽量化に貢献しているだけではないかと思ったりします。勿論引き寄せやすいのでしょうが早く釣り上げる必要があるのは競技会程度で、日々は如何に釣り上げる事を楽しむかでしかないはずですから、高弾性のカーボンシートは使い方をよくよく考えなければ、良い結果をもたらさないような気がしてきます。


 まぁ肘を痛めたりしたのは私の竿の操作が下手くそだった部分も多々あるのですが、痛みが消えてからもこのゴツゴツとした感触に対する違和感を持ち続けていました。表現的にはスポーツカーに乗っているときに感じるタイヤからのゴツゴツとした道路情報が、ダイレクトに伝わってきたいわゆる乗り心地の悪い車の状態に似ています。
 それが優雅さを求めた上位機種になるとその軽快感はスポイルされてしまうのですが、ゴツゴツ感が消えてとても優雅に取り込み作業が出来るのです。勿論肘にも優しいと感じるのですがその重量差もたった20g程度ですが、その重量差によってモーメントの違いはもあって、肘には優しくても肩には負担を掛ける割合が少ないと感じます。その為に強い合わせや大合わせは禁物で、小さくそっと合わせる癖を付ける必要があるのですが、その優雅さは竹竿に似た優しさとして感じることが出来ます。
 この優雅さを車に例えるとショックアブソーバーがよく効いてベンツやレクサスに乗っている感覚に似ています。竹竿に至ってはもっと優雅にショックを吸収してくれますので、ロールスロイス的と言うべきかも知れません。いやロールスロイスには残念ながら乗ったことはありませんが(笑)。


 そんな竿の違いをこの映像では表現されているのですが、先に書きましたようにネガティブな意見は聞くことが出来ません。そして今ではカタログから落ちている竿が圧倒的ですが、その時の論評が現代の竿と全く同じ表現をされているのが面白いです。と言うことは追求されている竿の理想は今も昔も変わらないのかも知れませんね。


 

2009年へらDVD「へら竿大全」