ヘラブナ釣りにおける 浮きのお話
ヘラブナ釣りほど多くの浮きを用意している釣りは無いのではないでしょうか。浮き箱に大小揃えているのは当たり前で、宙釣り用底釣り用と釣り方に合った浮きも大小揃えてとなるといったい何本用意すれば良いのかわからないほど増えていきます。
ですが案外好きな浮きのタイプは決まっていて、結局同じ浮きをいつも使っているようですね。
この浮きは大助浮きや!と一種の験担ぎ(げんかつぎ)のように大事に使い続けている人も知っています。
ヘラ浮きほど繊細に作られている浮きも少なく、小さなタナゴやモロコ釣りにハヤ釣りと小さな浮きでも繊細さではヘラ浮きには及ばない。まぁ渓流釣りだとその昔は目印に羽根を刺していたのでとても繊細ではありましたが、今では撥水性のある毛糸状の目印ですから傷むことはありませんね。
ヘラ浮きは、トップ、胴、足の3構造で出来ています。その昔オールピーコックと称するトップから足まで羽根で出来ているものがありましたが、個人的にはトップ以外オールピーコックが好きで今でも大事に使っています。
基本、トップの素材は、PCムク・グラスムクなどの中の詰まった無垢素材、パイプ・細パイプなどの中空素材。胴は、羽根、茅、バルサ、ポリカーボネート素材。足は、竹、カーボン、グラス素材でしょうか。
この中でも構造によってもっと細かく分類されますが、基本的には全て3構造になっています。
宙釣りとして使われているのが、トップと足が長く胴は短く丸い構造が多いようです。重心が胴の張りに近くヤジロベエの構造に近いので立ちが早いことを求めた結果でしょう。
底釣りは、トップはそれ程長くなく足は短めで胴が長く張りが少ない、全体にスリムな構造になっています。立ちは間違いなく遅いですね。
深宙釣りではこのミックス構造と言えるでしょうか。
では本当にこの差がその釣り方に合っているのでしょうか。仮に宙釣りで底釣りタイプの浮きを使うと当たりが出にくいのか。宙釣り用の浮きを底釣りに使うと当たりが出にくいのか。
当然ここにも物理の法則を無視しては語れません。
物質の浮力が高いほど沈める力量は増える
これは誰しも認めるところでしょう。浮き輪に捕まっていると人は沈まないのは経験済みですよね。浮き輪程度の空気の量ですら人を浮かせる力があるのですから、ヘラ浮きを沈める力量は相当なものと考えることが出来ます。
では、浮力だけで語れるのかとなるのですが、そこには水の抵抗が加わるのでその事も考慮する必要があります。
水に対して水平方向が広いほど抵抗力がある
これも間違いのない事実ですから、細い浮きより張りのある浮きの方が抵抗力が高いのです。
上記2つを組み合わせると次の答えとなります
ピンポン浮きのような構造の浮きは、中空で浮力があり横に広がっているために抵抗があり沈める力量が増大するので当たりがわかりにくい
ではヘラ浮きにはどんなものが良いのかですが、単純に当たりを出す、当たりを見やすくする、小さな当たりに対しても視認性を高めるためには、当然細く長い浮きが適している事になります。
その昔、オモリなんて殆ど乗らない極細の浮きが使われていました。道糸も0.2や0.3程度の極細でとても繊細な釣りだった記憶があります。
これはヘラブナのサイズもそれ程大きくなかったからでもあるのですが、ヘラブナそのものの性質は昔も今も変わっていませんので、人々が寄って集って釣り難い釣りを作り上げていた結果でもあったのです。
実際の釣りを考えますと、浮力がどんなにあっても板オモリを巻いて浮力を相殺させますので、浮力が高くても当たりが出難い事にはならないのですが、もう一つ物理の法則で忘れてならないのが、物質の質量です
質量が高いほど動力質量が増える
言い回しは難しいですが単純に考えますと、ピンポン球とゴルフボールの差です
ピンポン球は中空なので質量が低く、ゴルフボールは中が詰まっていますので球体としての大きさが余り変わらないのに質量が高い事になります。結果としてピンポン球は簡単に吹き飛ばせますがゴルフボールは動きません。この時の力を動力質量と表現します。
これは陸上でのことであり水上では別の法則がありますので、ピンポン球とゴルフボールの違いは、別の結果となってしまいますのでひとまず横に置いて・・・
これをヘラ浮きに当て嵌めると、浮きに使われている素材や構造によって動力質量が変わることになります。
浮きの浮力をいくら相殺してもその浮きの質量が高いほど当たりの出方が小さくなってしまうのですが、浮きそのものも素材だけでなく
巻いている板オモリの重力も動力質量に影響を与えている
これも忘れてはならないのです。
ややこしくなってきましたねぇ。(笑)
道糸、ハリス、浮きと繊細な構造を追求してきて、ここに来て大きな障害となるオモリの問題が出てきました。
餌を食ったヘラブナの動きがハリスに伝わり浮きに伝わるためには、途中のオモリを存在はとても重要になります。
ドボンの構造を見てみましょう。中通し構造になっているため、途中とても重いオモリがあってもヘラの当たりはダイレクトに浮きに伝えます。
その為に弱い当たりでも伝えると思うのは間違いで、浮きはその重いオモリを背負っても沈まないほどの浮力を有しているため、オモリでバランスが取れているのはあくまでもオモリが固定されている状態であればであって、中通しでの場合は浮きの浮力はそのまま針に伝わり、しっかりした浮力をも沈ませるような強い当たりでなければ浮きへの変化が伝わらないのです。
では、板オモリを巻いてある仕掛けの場合はどうか。
1つの答えは、浮力とオモリのバランスが取れているので、水面からでているトップを浮かせるだけの浮力が残っているに過ぎないことになります。
となると答えは簡単で、パイプトップよりムクトップの方が浮力が小さいことになります。
ではムクトップを使うべきかとなるのですが、そうは行かないのがヘラブナ釣りの面白いところで、それ以前に実はまだ物理の法則の解決が出来ていません。
どんなに浮力を殺した仕掛けであったとしても、それに見合うオモリを着けている限り、そのオモリを水中に引き込むだけの力量がヘラブナに備わっていなければ当たりとして表れないのです。
そこで1つの答えが導き出されます。
オモリがより多く背負う浮力のある浮きは感度が悪いのです
オモリでバランスが取れているから無視して良いとは、先の説明で崩壊していますので、間違いなく繊細な浮きほど明確な当たりとなって表れます
ですが、そんな繊細な浮きを使うと釣りが成り立たないのです。団子なら沈下速度が遅く途中でもまれて餌が持たなくなりますし、うどん餌ならジャミがうどんの端を引っ張りカラツン地獄に陥ってしまいます。
じゃあどうすれば良いのかですが、残念ながら答えを持ち合わせていません。所詮人の考える事ですから、水中のヘラブナのことはわかりません。
繊細な当たりで釣れることもあれば消し込み当たりで釣れることもあるのですから、当たりの出方つまり食い方にも違いがあることになりますので、どれが良いかなんて言えないのですが、最低限止水を限定に言うならば「細長い浮き」が当たりを取りやすい事だけは断言出来ます。
宙釣りであってもヘラに弄ばれない程度の密度であれば、底釣り用で良いことになります。反対に寄りすぎる場合は、張りのある浮きの方が当たりを見極めやすいのも間違いない事です。
何故なら!
重心が低いほど安定する
これも物理の法則そのものですよね。重心が下にあり細長い浮きほど横ブレが起きにくく、小さな当たりでも浮きが下に動く運動力として表れるのです。
同じ釣り方をしていても浮きを変えると当たりの出方が変わってしまいます。
カラツン対策として浮き下を調整したりハリスの長さを変更したり針そのものを交換する人が多いと思いますが、カラツン対策として浮きを変えるだけで解決することもあるのです。
釣り人の迷いが浮きの数として表れていると思うのです。多く持っている人ほどその迷いは深のではないでしょうか。
でも、その迷いすらヘラブナ釣りの楽しみ方だとすると、釣具店を覗いてこの浮きはどうだろうと吟味するのもヘラブナ釣りそのものですね
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