両うどんのヘラブナ釣り

ヘラブナ釣りで人生を楽しんでいる日曜釣り師です

常時50枚の釣果と大助を釣り上げるために

 ヘラブナの食餌行動学のような話 その2

 元々日本固有種としてのフナには、いわゆるマブナと称されるキンブナ類としてキンブナギンブナオオキンブナニゴロブナナガブナの5種とゲンゴロウブナがいます。
 フナ寿司で利用されるフナはニゴロブナです。特にメスが珍重されているのですが、漁獲量も少なくとても高価になっています。その為に比較的手に入りやすいヒワラが使われているのですが、より安いヘラブナも利用されるようになってきました。
 しかしフナには他の種ではあり得ないほどの同種間に違いがあるのです。


 フナと一言で表現出来るほど簡単な種ではなくて、フナの中で特に面白い種にギンブナがいます。ギンブナはオスの精子を必要としないのです。メスだけで子孫を残していることになるのですが、実は、ギンブナにはオスが存在しないのです。そこでその昔までは、他のフナ類のオスと受精すると考えられていました。
 しかし、研究が進むにつれて他のフナとの受精をしているのではなく、メスだけで受精卵的な卵を産んいることがわかりました。
 ではとうして他のフナ類のオスと受精していると思われたのか。それは他のフナの産卵行動を起こしているときに、同じ場所で時期を合わせてギンブナも産卵しているからです。
 研究でわかったことは、ギンブナが産卵するには他のフナの精子の刺激が必要だとわかってきました。つまり同種のフナの精子が単なるスイッチ的役割となって受精卵的な卵を産む事がわかりました。メスだけでの産卵行動を雌性発生と表現します。
 ギンブナは、本来の固定種ではなくキンブナとオオキンブナなどの雑種と考えられています。異種間の雑種で染色体数が3倍体のため本来は子孫が出来ないのですが、メスだけで子孫を残せるようになっているようで自然は不思議ですね。


 釣りには全く関係ない話になってしまいましたが(笑)、ではゲンゴロウブナと他のキンフナ類と何が違うのか。


 キンブナ類の食性は基本水生昆虫食です。小川で赤虫を餌に小鮒を釣った経験があると思いますが、イトメやミミズにヒル、小型の貝類などを捕食しています。これを底生食といいます。付着藻類も食べているようですが、水中の底生動物食の方が強いようです。ギンブナは雑食性で何でも食べてしまうようです。
 ゲンゴロウブナは、幼魚の間は動物性プランクトンを食し、その後付着藻類を飽食しだし成魚では植物性プランクトンを食するようになるとされています。
 フナ釣りといえば赤虫やミミズでしたので、その頃の琵琶湖界隈では、ゲンゴロウブナは釣れない魚とされていました。
 ゲンゴロウブナが植物性食との理解がされる前の話です。


 フナ釣り以外に鯉釣りも盛んに行われていました。初めの頃は鯉釣りにはサツマイモが利用されていました。鯉釣りでは、サツマイモを新聞やタオル巻いて、柔らかく茹でてサイコロ状にカットして針に刺して釣っていましたが、それから徐々に改良されて芋を練って団子にする方法が考えられて行くのですが、鯉を目的の団子では、芋が面倒なのでさなぎ粉と小麦粉を混ぜて団子にする方法も考えられていくのですが、芋だけで団子にした餌にゲンゴロウブナが食いついてくる事があったのです。
 余談ですが、米ぬかも利用されました。今でも撒き餌に利用される方もいるようですが、糠を使う場合は必ず煎ることです。これだけは必須と言えますが煎ることで成分の変化が起きるためですが、それはまたの機会で・・・


 ゲンゴロウブナは芋団子で釣れることがわかり、また植物性食との知識が広まることでサツマイモより手軽な業務用でコロッケなどを作る原料として売られている、ジャガイモのマッシュポテトを使って釣るようになっていきます。
 ところでゲンゴロウブナの改良品種がヘラブナとされています。外形も似ているのですが、一番似ていたのが鰓耙(サイハ)の数です。他のフナより圧倒的に多くて長いのです。
 ただ改良品種とするなら誰がどのように何を改良したのか、詳しい方がおられたら教えて欲しいのですが、ゲンゴロウブナとヘラブナの差はどこにあるのでしょう。また何のためにゲンゴロウブナをヘラブナに改良する必要があったのか。
 個人的には全くの同種だと思っているのですが、成長速度もゲンゴロウとの差はないようです。琵琶湖での呼び名にヒワラという鮒がいますが、これは実はギンブナのことです。
 大阪の河内地方で養殖されるようになります、それがヘラブナの原型であるところのカワチブナです。品種としてのカワチブナではなく、養殖されている地方名が付いたフナです。ただフナは雑種が出来やすいのか、今見る金魚の原型は全てフナです。背ビレのないランチュウや出目金、三尾の和金も全てフナですからフナの同定はとても難しいのです。
 ヘラブナの世界でも鯉ブナなんて表現もあるようで訳がわからないですよね。


 さて、ヘラブナの鰓耙の数をみて余計に植物性食との思いが固定されていくことになります。釣り人の多くは植物性食だと思っているはずです。それは1つの真理でもあるのですが、真理は1つと限らないのです。
 マッシュやグルテンにイモと植物性の餌を現実に使っていますが、だから植物性食に間違いないのです。ですがもしある一定の粒の粗さをも飽食することが出来るのであれば、切れた藻類、水面に落ちた葉も飽食するはずでが、全く食べないのです。間違って食べても直ぐにはき出してしまいます。つまり葉や藻は食べるものではないと判断しているから吐き出します。それでも植物性食と言えるのでしょうか。
 もっと言えば、水中には決してないジャガイモの粉末であるマッシュポテトは、産まれて1度として出会ったことがないはずの物質です。


 以前このブログで、イクラなど食べたことも見たこともないイワナやアマゴがイクラで釣れる事実。南氷洋にいるオキアミなど出会ったことがない日本近海の魚が、撒かれたオキアミを狂ったように飽食する姿を見たことあるでしょう。鯛やハマチなど多数の魚がオキアミで釣れる事実をどのように説明できるでしょう。
 チヌ(黒鯛)釣りの餌としても今ではオキアミを使いますが、餌取りが多い時期は生サナギの粒をそのまま針に挿して釣ります。どうしてサナギで釣れるのかと疑問に思っていましたが、まことしやかに養蚕場が上流にアリ、絹を取った後のサナギを川に流していたからとか、静岡ではスイカで釣れるのは海にスイカを流しているからだとか言われていました。今は缶詰のコーンまで使っていますよね。
 ですが考えてみて下さい。環境問題が喧しい昨今で産業廃棄物を川に流すわけがないのです。まして今年生まれた当歳魚ですら食ってくるのですから、学習によって食ってくるわけではないことがわかります。


 私は肉食の熱帯魚を飼っていたことがあります。常食は小赤と称する小さな金魚が餌でした。夜店に出てる金魚すくいのあの金魚が小赤と称されて売られている餌金ですが、金魚ばかり与えていると餌代が高く付いて仕方がないので、乾燥したオキアミを与えていました。乾燥したエビよりよく食べていました。
 淡水の熱帯地方に住んでいる川魚がオキアミを食べる不思議はどのように説明が出来るでしょう。
 つまり今何を食べているから何性食と断定するのはおかしいことになってきます。


 実はその答えがもう出ているのです


 餌と認識するのは全てアミノ酸によるものです


 それは日常飽食している餌、たとえばゴカイを食べるキスだとしたら、ゴカイに含まれているアミノ酸を添加してやれば輪ゴムでも食べてしまいます。
 イワナがイクラを補食するのは、川虫と同じアミノ酸がイクラに含まれているからです。
 鯛がオキアミを食べるのは、鯛の好む海老や貝と同じアミノ酸が含まれているからです。


 つまり魚類の食性はアミノ酸の違いで飽食できる餌かどうかを判断しているのです


 見た目の形や動きで判断しているわけでもなく、匂いに分類されるアミノ酸で判断しているのは、ヘラブナも同じ事で、マッシュだから食べるのではなく、グルテンだから食べるのでもないのです。
 もしマッシュポテトが好餌だとするなら、何も添加しなくても爆釣するはずですが、今ではマッシュだけで釣れてくることは殆どありませんね。
 釣餌メーカーはその点を理解していますので、いろいろなアミノ酸を添加してヘラブナの好むであろう餌を研究しているのです。反対にバニラの香りやガーリック臭など、人が美味しそうと感じる匂いを付けていますが、これらは釣果に影響しないのです。
 素人がスーパーでマッシュポテトを買ってきて、バニラやガーリックにカレー粉などを混ぜて作っても、メーカーの作る餌に対抗できるマッシュ系の餌を作ることは不可能に近いのです。


 つまり、植物性食だからマッシュポテトで釣れるのではなく、含まれているアミノ酸がヘラブナにとって飽食できるか判断されているだけです。
 事実マッシュよりサナギ粉の方が寄りが良くないですか?浮いて仕方ないですが(笑)
 マッシュより魚粉が配合されているペレット系の方が寄りは良くないですか?


 サナギや魚粉に強く反応を示すのに、それでもヘラブナは植物性プランクトンを食べる植物性食と言えるでしょうか。
 反対にペレットを食べるから動物性食とも言えないのです。


 養殖業者が魚をより早く成長させたいがために、食性にかかわらず魚粉を与えているのです。つまりヘラブナは植物性食でありながら動物性の餌を与えられていることになります。
 一時問題になったのは、草食性の牛の飼料に同種である牛の肉骨粉を与えて成長促進させていた事がありました。狂牛病の温床となっていますが、ヘラブナにも成長促進のために植物プランクトン食であっても魚粉を与えて成長を促しますが、慣れた餌の匂いでペレット系で釣れるのですが、ペレットの魚粉に反応しているのではなく、ペレットに含まれているアミノ酸に反応しているのです。同時にペレットの魚粉率は高くて50%程度です。他は小麦粉やフスマなどの植物性が利用されていますが、ペレットの匂いを学習しているためにヘラブナの寄りが良いことになります。
 また淡水用養殖餌としてのペレットには数種類あります。魚粉率が30%台から60%近くまでと多数あるのですが、魚粉率が高いほどヘラブナの反応が高いとの事はないのです。
 釣り餌としてペレット系が売られていますが、見た目で魚粉率が高いか低いかは、色の濃さにあります。茶色が濃いほど魚粉が多く、薄いほど小麦粉などの植物性が多いので、それをみて魚粉の多さで餌を選ぶ事が出来ます。


 もし同じアミノ酸を添加しているためだとすると、ペレット系よりグルテン系やマッシュや麩の方が良く釣れると私は思っています。


 それはヘラブナが食べやすいように水中部分散するからと思うのですが、鯉の場合は咽頭歯があるので、堅いペレットでも平気で食べられるのですが、ヘラブナにはありませんので堅いペレットは食べにくいのです。


 両うどんの場合も、うどんで釣れるのはまぶし粉のアミノ酸が付着してヘラブナを誘因するからで、浮遊するまぶし粉がなくなってから、まぶし粉が剥がれたうどんを食ってくるのだと思うのですが、なんで食べてくれるのか不思議ではあります(笑)。
 まぁあくまでも個人的に想像しているだけです(笑)


 最後にアミノ酸といえば味の素を思い浮かべるでしょうが、味の素の主成分はグルタミン酸ナトリウムです。残念ながらグルタミン酸ナトリウムが含んでいる餌は自然界には存在しないので、味の素を添加してもヘラブナは釣れません。
 海の魚では、イカに味の素を振りかけると良く釣れたとの話はありますが、実はイカそのものに多量のアミノ酸が含まれているのであって味の素のグルタミン酸の影響ではないのです。


 ということで、いつものように答えのようで答えでない話でした、チャンチャン